『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』

『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』

中目黒にオープンしたスターバックス リザーブ ロースタリーが大変な人気らしい。ラグジュアリーな空間で「希少なコーヒー豆を」「丁寧に焙煎し」て「のめり込むようなコーヒー体験」を提供しているという。

なぜスターバックスは、従来の店舗だけでなく、その業態をつくらなければいけなかったのだろう? この本を読むと、その答えが間接的にわかる。

それだけではない。Amazonが米国で展開する無人・レジなしコンビニ「Amazon Go」も、中国の巨大EC企業アリババの新規事業も、根っこで全部つながっている。巨大な地殻変動が、いまどのように起こっているのか、その片鱗がわかる。

私たちが「オンライン」という時、それは「オフライン」という言葉の対義語として使う。たとえば、本やミネラルウォーターをオフライン(スーパーやコンビニなどリアルの)店舗で買うのか、オンラインショップで買うのかというように。

けれども、この本のタイトルにある『アフターデジタル』とは「オフラインのない時代」。つまり「デジタルが完全に浸透した後の世界」だ。

それは、リアルの店舗がすべてオンラインショップに置き換わってしまうという意味ではない。すべてがデータ化され「つながった」世界において、リアルとデジタルが融合していく世界(この本では「OMO(Online Merges with Offline)」という言葉で説明している)。

たとえば、中国の自動車業界向けオンライン媒体「ビービット」は、洗車や駐車、自動車保険などのサービスを通じて得られたデータをコンサルティングに活用し、自動車メーカーの7割を顧客として開拓しているという。

中国・アリババの創業者ジャック・マーは、こう言っているという。

「10年、 20年後の未来に、 EC( e-commerce、電子商取引)がなくなり、代わりにニューリテールが出てくるだろう。これはオフライン、オンラインと物流の融合である」と言っています。

アリババが運営する中国のOMO型スーパーマーケット「フーマー」が、写真と共に紹介されている。それは、客が買い物をするリアル店舗であると当時に、まるでAmazonの配送センターのように、アプリ経由で入ってきた注文を店員がピックアップして、専用の配送バックに詰めてベルトコンベアに載せていく巨大なロジスティクスセンターになっている。その場で新鮮なタラバガニやロブスターを買って、店内のフードコートで食べることもできる。

つまり「食品ECの倉庫に顧客がウォークインできる」場であり、顧客は実際に足を運んで、生鮮食品の新鮮さを確かめることもできるし、購買データによって、おすすめやクーポンがアプリの画面に表示される。

日本でも、店舗で実物を確かめて、オンラインで注文する人が増えている。リアル店舗の売上は、オンラインに食われていく。だったら、オンラインとオフラインの顧客接点を融合してしまえばいい、というのが、この場合の未来図の第一歩となる。その出店の立地もまた、ビッグデータに支えられている。このエリアに住む人の平均年齢、子育て家庭の割合、消費傾向や嗜好まで。データを得るために顧客接点があり、顧客接点があるから、データを蓄積できる。

20世紀は「石油の時代」だった。20世紀初頭にフォードが自動車の大量生産化に成功し、大量輸送・大量生産の時代が幕を開けた。その時代、石油を制するものが王であり続けた。これから「データ・イズ・オイル」(データは資源)の時代を迎える。それを見越した生態系が生まれつつある。