民間と行政の新たな連携 「日本版Government Relations」が必要な理由

民間と行政の新たな連携 「日本版Government Relations」が必要な理由

なぜいま、Government Relations(ガバメント・リレーションズ)が必要なのか?

2018年、自分の会社を「Glocal Government Relationz株式会社」(以下:GGR)に社名変更しました。

これまで8年間、横須賀市長としてさまざまな地域課題に向き合ってきた中で、民間と行政が連携する「日本版Government Relations(ガバメント・リレーションズ)」が必要だと考えたからです。

PRという言葉がありますが、Public Relations、世の中とどうコミュニケーションするかという意味ですよね。IRはInvestor Relations、株主とのコミュニケーションです。Government Relations(以下:GR)、つまり政府や自治体とのコミュニケーションも、同じように大事だと思っています。

行政というのは、もともと課題解決のためにあります。けれども社会構造の変化によって、課題もまた大きく変わっています。待機児童問題や空き家問題など、ひと昔前にはなかった問題です。一方で、税収の先細りや社会保障費の増大によって、行政の財源もマンパワーも逼迫しています。自治体行政単体で多様化する問題を解決していくことは、難しくなってきています。

一方、民間企業の持つ新しい技術をベースにしたサービスやソリューションが地域課題の解決に役立つ事例が増えてきました。けれども「自治体と組んで実証実験を行いたい」「市場を開拓したい」と思っても、どの窓口に行っていいか誰に話を通していいかさえわからないという話もよく聞きます。

よくGRというと「ロビーイングのことでしょう?」といわれます。英語を直訳するとその通りですが、GRの定義は広く、以下のようなことが含まれると考えています。

ロビーイングというと、特定の会社や業界への利益誘導というイメージを持たれがちです。もちろんそうしたアプローチも必要だと思いますが、GGR社は、社会の課題解決に向けて、自治体と民間企業の関係を構築していくことを目的にしています。

民間と行政の連携「GR」がイノベーションを加速していく

電動キックボードのシェアリングサービスを展開しているLUUPという会社があります。電動キックボードは、海外では一般的ですが、日本では公道を走る時には原動機付き自転車と同じ扱いになり、ナンバープレートをつけなければいけません。

けれども上手に使えば、住民の移動効率の向上にもなりますし、観光にもつなげられる。そこでGGR社がお手伝いし、静岡県浜松市・奈良県奈良市・三重県四日市市・東京都多摩市・埼玉県横瀬町と連携協定を締結して、これから実証実験を進めていきます。

LUUPは静岡県浜松市・奈良県奈良市・三重県四日市市・東京都多摩市・埼玉県横瀬町と連携協定を締結

スタートアップ企業をはじめとして、民間企業から先進的な技術やサービスがどんどん生み出されています。そうした企業と組むことによって、自治体としても、地域の課題をより効率的に解決できるというメリットがあります。たとえば2016年には岩手県釜石市がAirbnbと提携しましたが、これなども好事例だと思います。そうした連携のお手伝いをしていければと思っています。

釜石市だけでなく、民間企業と組んで、イノベーションにつなげている自治体は増えています。たとえば横瀬町は「よこらぼ」という仕組みをつくって、自治体と連携したい企業を広く呼び込む窓口としています。政令指定都市の中でトップの人口増加率を誇る福岡市も「イノベーションスタジオ福岡」というプラットフォームの設置をはじめ、さまざまな取組を行なっています。

しかし、こうした取組を進めている自治体の方がまだ少数です。たとえば民間企業が自治体と組みたいと思った時、どの自治体が前向きに民間とのコラボに取り組んでいるのか、どの領域に注力しているのか、情報が一元化されているわけではありません。

「(市長や町長など)首長を紹介してくれ」と依頼されるケースも多いのですが、難しいのは、地域のキーパーソンは、必ずしも首長に限らないということです。議会かもしれないし、役所の職員かもしれませんし、NPOなどの団体が、民間と自治体の架け橋となって機能している地域もたくさんあります。

どの自治体がいいのか。窓口はどこか。キーパーソンは誰か。入札か、指定管理者制度を使うのか。法律をどのように使うのか。ほかの地域にどう横展開していくのか。

そうしたノウハウがすべてオープンになり、一元化されることが理想的ですが、現段階では、まだそうなっていない。双方で一生懸命取り組んでいるのに、ボタンをかけ違ってしまっているケースもあります。情報の偏在性が残ってしまっているのです。

将来、自分の考えるGRが日本に浸透したら、官民の垣根が下がって、課題解決に向けて一緒に取り組んでいける社会がやってくるのではないか。「GRなんていらない」そう思える社会がゴールだと思っています。

吉田雄人氏 プロフィール

1999年〜2002年 アクセンチュア株式会社
2002年〜2006年 早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了
2003年〜2009年 横須賀市議会議員
2009年〜2017年 横須賀市長(2期8年)
現在
Glocal Government Relationz株式会社 代表取締役
早稲田大学 環境総合研究センター 招聘研究員
Japan Times Satoyama推進コンソーシアム 事務局長
熱意ある地方創生ベンチャー連合 事務局長
NPO法人なんとかなる 共同代表
地域課題解決のGR人材育成のための「吉田雄人ゼミ」主催